キリギリスの雑記帳
キリギリスの雑記帳

第24話
旅先で発病した人たち


ネパールのポカラの安ホテルで静養すること約1週間、

立って歩けないほど弱っていた体は次第に回復し、元気を取り戻していった。

体の回復とともに、弱気になっていた気持ちも回復し、ますます旅を続ける意欲が沸いて来るのだった。

「これから中東を横断してヨーロッパまで行ってやろう。イスラムの国々も見て歩くのだ!」



それにしても肝炎じゃなかったのだろうか。
あれはいったい何だったんだ?

医者は何を言っているのかさっぱりわからなかったが・・・

ただの「疲れ」からくる一時的な衰弱だったのかな?
体重も10kgも減ったことだし。


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この旅では途中多くの日本人旅行者と出会い、宿賃を節約するためにホテルの同じ部屋に泊まることが多々あったが、話を聞いてみると、悲惨で気の毒な経験をしている者が何人かいた。

私の経験した一時的な「病気」なんかマシなほうだ。


● パトナで出会った男。

彼はアジア全域を旅してやろうと勇んで日本を出たものの、最初に訪れたタイで狂犬に噛まれてしまった!

狂犬病は当時アジアを旅行する者にとって最も恐ろしい病気のひとつで、もし発病してしまったら致死率が非常に高い。( 100%ともいわれる。)

彼は治療のためバンコックの病院に1ヶ月ほど入院し、そのため所持金をほとんど使い果たしてもう50ドルしか残っていない。

大旅行をあきらめて、そろそろ日本に帰国しなければならないのは仕方ないとしても、今後も狂犬病の発病を恐れて生きていくことになる。



● バラナシで出会い、カトマンズで再開した小池さん。

彼はバラナシで私と別れた後、別の街でインド人に話しかけられ、食事をともにした。

食事をした直後、急に頭が混乱し、訳が分からなくなっている隙にお金や小切手を盗まれてしまった。

食事の中に「アヘン」を盛られたのだ。

そのために、お金を盗まれただけでは済まなかった。

急激に大量のアヘンを盛られたため中毒状態となり、禁断症状に苦しむこととなったのだ。

彼はインドの病院に1ヶ月ほど入院を余儀なくされ、アヘン中毒はほぼ治まったものの、夢であったアフリカまで旅を続ける資金はなくなり、カトマンズへやってきたという。

その後に後遺症は出ないのか?

大麻系は中毒性がないがアヘン系は中毒性が強く、悪影響は計り知れない・・なんらかの影響がないとはいえないのではないだろうか。



● イランのテヘランで出会った男。

彼はまさに肝炎にかかってしまった人だ。

医者から「塩辛いものを食べてはイカン」と命じられ、食べ物は自炊していた。
米や野菜を現地の市場で仕入れ、鍋で煮て食べる。味はない!

塩を入れてはダメなのだそうだ。

彼と同じ部屋に泊まっていたときは、イランの料理がまずくて高いことから私も自炊していたが、
私ひとりだけおいしいものを食べるのも気がひけて、彼につきあって、彼と同じものを食べていた。

まずい!! 肝炎患者が食べる料理はとてもまずい。
 (-_-;)

なにしろ塩が入っていないから・・・

「塩」は、世界一おいしいものなんではないだろうか?

どんなにおいしいものでも、塩気がなければ食えたもんじゃない。

彼はいつまでこんな料理を食べ続けなければならないんだろう。



● そしてトルコのイスタンブールで出会った丸山さん。

後のお話で出てきますが・・・

彼は、私が教えたおいしい料理店に行こうと道を歩いていたところ、反政府ゲリラが放った銃弾に当たってしまった。
  (@_@)



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さて私はこれから西へ、ヨーロッパへ向かうことにした。

一旦カトマンズへ戻り、それから再びインドへ降りる。
( 本当はポカラからインドへ行く予定でポカラまで来たのだが、迂闊にもインドの入国ビザを取り忘れていたことに気づき、再びカトマンズに戻らなければなくなったのです。←アホ)

前回、陸路でインドのパトナへ向かったときは、途中の町で警官にお金を強奪されたのだった。

あそこを通るとまたやられるかもしれない。
もう一度同じ目にあってたまるか!



そこで飛行機で行くことにした。

飛行機はもちろん陸路で行くよりもお金がかかる。

しかし情報によれば、パトナは禁酒の州なので禁をやぶって飲酒したいお金持ちがたくさんいるため、カトマンズ空港でTax freeの酒を買い、それをパトナで高く売れば飛行機代はモトがとれるという話を聞いていた。


ではやってみよう。

小さなプロペラの双発飛行機は随分と揺れながらインドのパトナ空港に着陸。

カトマンズ空港の免税店で買ったジョニ黒などのウイスキーを入れた、一目で免税店のものと分かる大きな袋を目立つようにぶらさげて、人が集まる鉄道駅に行ってみた。

ものの数分も歩かないうちに、リキシャの運ちゃんが声をかけてきた。

運ちゃんは慣れた感じで私をお金持ちの家に案内するのだった。

1軒目の家では門前払い。

2軒目の家では中に通された。

奥の部屋にはこの家の主人と思われる男が座っており、私との間で値段の交渉がはじまった。

多少値引き交渉はしたものの、意外にあっさりと決まってしまった。

そう、カトマンズからパトナまでの飛行機代は見事にモトがとれたのだ。

酒を飲みたいお金持ちは、金に糸目をつけず外国人から酒を買うシステムが出来ているようだ。

リキシャの運ちゃんは私に運賃を請求しなかった。
当然、あのお金持ちが駄賃を上げたのだろう・・・


インドの、とある寺院 (場所は忘れた)

旅行記 目次

第1話 旅の序章、 第2話 入国拒否、 第3話  強盗だー!、  第4話 TOMODATI!、 第5話 聖地の大晦日、 第6話 泥棒もひとつの「職業」、  第7話 船旅、  第8話 ヒッピーの聖地(海岸の小屋)、 第9話 ヒッピーの聖地(パーティー)、  第10話 ヒッピーの聖地(LSD)、 第11話 ヒッピーの聖地(朝の光と波の音は・・)、  第12話 インド人は親切だ?、 第13話 田舎を行く列車の旅、 第14話 変わり始めた片田舎の町、  第15話 皆既日食を見た!、 第16話 屋根の上のシタール弾き、  第17話 カルカッタにて、  第18話 ヒマラヤの旅(1)、 第19話 ヒマラヤの旅(2)、 第20話 ヒマラヤの旅(3)、  第21話 ヒマラヤの旅(4)、 第22話 ついに発病か?、  第23話 ポカラの公立病院、  第24話 旅先で発病した人たち、 第25話 酷暑、 第26話 日本は「ベスト・カントリー」だ!、  第27話 目には目を?、 第28話 沙漠の国、  第29話 「異邦人」の町、  第30話 沙漠に沈む夕陽、 第31話 アラーよ、許したまえ、 第32話 イランの印象(1)、  第33話 イランの印象(2)、 第34話 イランの印象(3)、  第35話 中東にはホモが多い?、  第36話 「小アジア」の風景、 第37話 イスタンブール到着、 第38話 国民総商売人、  第39話 銃撃事件、 第40話 旅の終わり、  最終話 帰路・あとがき